料亭予定地

この世界の片隅に 初回感想

2017/01/29
映画レビュー




この世界の片隅に 初回感想


(2017年 01月 29日の再録です)

この世界の片隅に、を観に行った。
予想以上!とても良かった!

<めっちゃネタバレです。読むなら絶対見てからにしてください>


 
すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していくなかで、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。



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*ここからネタバレを含みます。





情景描写と、絵に切り替わる演出がすばらしい。
もちろん声もすばらしい。

そして、アリーテ姫は健在だった(笑)

ゆるふわ天然ちゃん主人公が可愛くていとしい。
義姉が、このゆるふわ話をぴりっと引き締めている。

唯一の違和感は、戦争に対する恐ろしいまでの他人事感ではある。
そこを指摘する人がいるのはわかる。

この時代の女性に参政権はないし、国際情勢も遠い世界のことだ。
政治は一般市民とかけ離れている。
この感覚は今の人々も同じではないのかな?

すずは少女だ。

何も知らずにただ日常を生きている少女、彼女が手を引いていた姪と同じ。

姪(少女)が現実(爆弾)によって飛散した時、右手も失われた。
彼女を非凡たらしめていた個性、声なき者のみに与えられた才能、生きる喜び、表現する喜び、内部に広がる彼女の世界へ通じるコネクターを失った。

死んだも同然の彼女が、ゆっくりと、彼女なりのペースで立ち上がる。
故郷からずたずたの少女が一人、すずの手を取る。彼女の腕を補完する。



戦争になった原因だとか全て置いといて、一人の女性を鮮やかにスクリーンに描いたという感じ。

リンさん設定もない方が映画としてスッキリする。
(そこをすごく指摘する人が多かったので、漫画版を購入して知った)

いやいや、絶対にない方がよかった。

裏設定としてはあってもいいけど、すずだけ好きでいてほしい。
そんな理由で嫁に……いやいやいや、ないわ。
ない方がいい。

絶対にいい。

この世界の片隅にうちを見つけてくれてありがとう、って台詞が生きなくなってしまう。

すずには幸せでいてほしいし、そんな複雑な気持ちを彼女に抱えさせるなら、周作をダメ男認定してしまうよ?
絶対ないほうがよかった。
ちょっと原作ファンにもサービスして匂わせる程度でいい。



のんの声はめっちゃハマっていたが、周作の声がまた良かった。
哲の声も良かった。

やはりいい映画、評判になる映画というものは、いい萌えがあるものだな!!と改めて思った。



哲について。

最高の萌えはやはり哲エピソードだった。
ゆるやかな描写とキャラが、ドキッとする画面と対照をなして際立っていた。

ドキッとしたのは性と死の話だ。(生ではなくて性)
空襲、死などに混じって、生々しい性的な話が出てくる。

納屋に鍵をかけた時は(わたしが)激しく動揺した。
リンのことを知っていたなら、ああ、周作はすずを自分と同じ所へ落とそうとしたんだなとかも思えるだろうが、
ないからね。

改めてしつこく言うが、そこはないからかえって良かったね。



リンのことはないものとして解釈すれば、あれは死にゆく軍人さんへの慰安の意味も、まったくなしではなかったと思う。
(この言葉、今や最っっ悪のイメージが付いてしまっているが…この場合はやはりこの言葉がぴったり来る)

日本はもう負けるという事実は、二人の間で共有されている。
すずの知らないことを、二人は既に知っている。

なぜ哲がここに来たのかも周作は理解するし、すずの自然な感情を表す姿にも嫉妬もしただろうが、二人の間に好意があったことも察してる。

しかし察するというのは、ひとりよがりの行為でもある。

・慰安の意味10%ぐらい。
・好きあった者同士を死ぬ前に想いを遂げさせてあげたい60%ぐらい。
・無理やり嫁にしたのは自分だから申し訳なさ20%ぐらい。
・勝手にしろ10%ぐらい。

……て感じで受け取った。

(リンが出てくるとごちゃごちゃして良くない)





哲の心は死を向いている。

死に遅れた彼は、心残りなく、思い残すことなく逝くことを願って、思いを残すすずの所に来た。

夫はすずさんと呼ぶのに、彼はすずと呼ぶ。
心の距離の近さがエロい。

けれどまさか周作がそこまでするとは思わなかっただろうし、だけどもうどうせ死ぬのなら思い残すことのないようにしたいとも思っただろう。
軍人に進呈された供与を受け取る甘えもあるし、すずのおっとりにつけ込む意識もある。

思い残すことないようにしたい+下心+すずも受け入れてくれるのではという期待……というか、たぶん彼女ならよくわからないままおっとり押し倒されてくれるんじゃないかな?的な。

この映画、男性陣の手の出し方が何度も言うが、実に実にエロい。

何気なくす~っと寄ってきて、そっと手を差し出して触ってきて、そういう方向に持って行こうとする。

(でも実は初夜の周作や納屋での哲が、何気ない風を装いつつ心臓バックバクだったりすると笑える)



二人とも、すずの人のよさにつけこんでいる。

そう、彼らは彼女を見くびっている。
悪く言えば若干、ナメている。

そんなこの子のどこに、と思うような思わぬ激しさを突然見せて、
こうなることをずっとどこかで望んでいた
という台詞は、哲にとって最高の思い出となる大切な言葉だったと思う。

のんの声の演技がすごく、すごく、良かった!!
いきなり激しい感情をむき出しにする、そのギャップがたまらなかった。



夫がいるのでとか、やっぱり無理だったとか、そういうのじゃなかった。
「哲への気持ちをすずがちゃんと口にした」、ということがね。
その上で、「腹が立ってたまらない」という夫への心の吐露がね。

周作はすずと哲を引き裂いておきながら、結局はすずの心を奪ったという感じのね。

萌え!のひとこと。
最高だね!

私には戦争より萌えの映画だねこれは!

哲とはここではっきりとお別れしたから、最後に声はかけないのだろう。



キツいモガお姉さんも良かった。

背丈測った傷の残る家族の思い出の柱を防空壕の入り口にさりげなく使う、優しい弟だ。
この姉も弟が好きで可愛いんだろうな、すずが物足りない気に入らないんだろうな。

そんな周作だからすずも好きになったんだろう。

なんてうまい、繊細な描写。
ポイントわかってる!

お料理や風景や戦争についてはきっと語り尽くされているから、萌え視点にだけ、集中した。


 ≫ 映画の感想記事

 
こうの史代(著)
主人公・すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。だが、昭和18年から描かれる一日一日を確かに健気に生きていく。戦中の広島県の軍都「呉」を舞台にした戦中を生きる小さな家族の物語。


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Ama Mew(天海悠)
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