料亭予定地

「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-4

2021/10/14
読書




「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-4


 
シェークスピア (著), 坪内逍遥 (翻訳)
シェークスピア作の全戯曲の全幕全シーン全文が坪内逍遥の名訳で読めて、日本語訳と同じページに該当する英語原文が表示されて、セリフ対セリフの比較対象が容易。対訳本として完備されているので、学習に、研究に観劇にピッタリの一冊全集。今回、シェークスピア没後400周年を記念して、完全新版として上梓。20年間、計6万部のロングセラー。


 ≫ 「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-1

 ≫ 菅野文「薔薇王の葬列」の感想


*ここからネタバレを含みます。





 
(ちくま文庫) W. シェイクスピア (著), 松岡 和子 (翻訳)
「口先で奇麗事を言う今の世の中、どうせ二枚目は無理だとなれば、思い切って悪党になりこの世のあだな楽しみの一切を憎んでやる」。世界を憎悪するリチャードは実の兄を陥れ、殺した敵の妻を口説き、幼な子を惨殺し、利用しつくした臣下はごみのように捨て―。奸計をつくして登りつめた王座に、破滅はあっけなく訪れる。爽快なまでの「悪」を描いた傑作。


(錯乱しているのでご注意ください)

ケイツビー派は安心してください。
ほんとに最後まで生きてますから。

一番違和感がない、忠誠忠僕の士。彼は。

リチャードの野望の炎は、リチャード三世になって、火に油を注いだように燃え上がる。

まだ読んでいるこちらは、前回のヘンリー6世第三部のすばらしいリチャードが心に残っているから、彼を応援するところからはじまる。



彼だって、王位継承者としては兄ふたり、兄の子とたくさんいるし、最初からうまくいくとはおもっていなくて、やぶれかぶれの猪突猛進でまず突撃したのが、赤エドの妻であったアンだ。

これが、予想外にうまくいってしまった!

イケメンだった赤エド(ここであの赤エドを想像してはだめです)の妻だったあなただし、わたしはこんなに醜い。
けれど、すべてはあなた恋しさからやったことなのだ、刺すなら刺してくれ、と胸を広げてひざまずく。

何とも言えないすごいシーンで、「地上を這うすべての毒虫よりも」と罵倒されている、その悪態を「あなたの美しさ」に転換しておっかぶせ、逆転させてしまう。
アンの呪いがすさまじければすさまじいほど、ここでリチャードがほめるアンの美しさが強調されるという、すごい発想。

さらに、無骨な武人タイプの男がひざまずいて、胸をくつろげるというのが、微妙にエロい。

もしこの恋を受け入れたら、その胸に「…」となるわけだ。

イケメンよりも男くさい方がかっこよく見えるとき、あるよね。

アンがなびいてしまったあとで、リチャードが驚きつつ、有頂天になるところがかわいい。
(前も書いたが大事な事なので十回ぐらい言ってもいい)

もしかして~おれってけっこうイケてるのでは!?
(・∀・)v



ここからバッキンガムの大活躍がはじまる。

ヘンリチャじゃないと駄目?
だってバッキンガムだよ!?
バッキンガムなんだから!(突然のじたばた)

公式のバッキンガムが、どれほどリチャードのために無茶苦茶やらかしたか、リチャードがどれだけバッキンガムに頼ってたか。

どんだけあきれるほどの長口上の台詞を吐いて、市民を口ポカーンさせても負けずに、涙ぐましい努力でリチャードをヨイショして持ち上げて、王様に押し上げたか
そこまでして何故?というぐらい公式に仲良しだったんだから

ヘンリーの設定の目の付け所も美形度も、本当に感心したけど、バッキンガムは公式なんだぁ!
シェイクスピアの薔薇戦争シリーズ本編を読んだ人なら!この気持ちわかってくれるはず!

かっこよいリチャードを知ってくれないと。

とにかく情けない王様たち。
権力に群がるけどお前がぁ?って感じのいまいちな人たち。
わぁわぁ騒ぐだけ騒いで事態を引っ掻き回す自分のことしか考えてない諸侯たち。
復讐に目の眩んだ戦争マシーンたち。

これらがひとかたまりになって、くんずほぐれつ噛み合いながら、血につぐ血の闘争を繰り広げる展開があって、そこを、腕一本で切り抜けてきたリチャードを知ってくれないと。

たぶん一般的なイメージのリチャード三世

・醜い(せむし)
・悪人で、下から目線で冠をうかがう
・野心家
・狡猾
・猜疑心のかたまり

という、「リチャード三世」のキャラだけでは、絶対に伝わらない。





ちょっと落ち着こう。

リチャードが首尾よく王位についてから、バッキンガムが
ねーねー早くごほうびをちょうだいよ!
としつこく迫ってウザがられる箇所、甘えを感じる。

王の心が離れたことを敏感に感じて身の危険を察知、リッチモンドのもとへ逃げようとするが不運に見回れる。

バッキンガムが最後、処刑前に王に一目会わせてくれと懇願する所もなんとも切ない。
この、
「一目会わせてくれ」
という字面だけで、薔薇王の読者は悶絶するとよい。

私はたとえ、醜いリチャードに小心者のバッキンガムですら萌えられます。



ラストに到る。

なぜ、最後の戦闘シーンで胸が締め付けられるような気持ちになるのか。
馬をくれ!馬を。引き換えに王国をやるぞ!
の一言が、なぜこれほど胸に刺さるのか。

リチャードが最後の最後に見せたかっこよさ。
かれは戦場で自分を取り戻したのだ。

勧善懲悪なはずなのに、どうしてもリッチモンドが好きになれないこの気持ち、この悲しさ。
誰にも味方してもらえないこの孤独、そりゃあ自業自得ではあるけれど…。

そのときは突っ走っていたから考えずにいられた、罪があとから追いかけてくる。
亡霊たちに次々に責められる、ネット炎上並の容赦のなさ。

ここが現代にも通じ、ぴったりハマるところが、シェイクスピアの凄さだ。
リッチモンドの孫のエリザベス一世時代に描かれているから、リッチモンド側を正義にするのはあたりまえ…でありつつも、この悪役を、醜く狡猾に冷酷な絵面でありながらにして、これほど魅力的に描く凄さ。

ほんの一握りでもよいから報われて欲しいと思ったそのとき、薔薇王の葬列に立ち返ればよい。
めっちゃ満たされるから。


皆さん、どうか…。
シェイクスピアの薔薇戦争シリーズを、一から読んでみて、おねがい!!








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Ama Mew(天海悠)
Admin: Ama Mew(天海悠)
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