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「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-2

2021/10/14
読書




「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-2


 
シェークスピア (著), 坪内逍遥 (翻訳)
シェークスピア作の全戯曲の全幕全シーン全文が坪内逍遥の名訳で読めて、日本語訳と同じページに該当する英語原文が表示されて、セリフ対セリフの比較対象が容易。対訳本として完備されているので、学習に、研究に観劇にピッタリの一冊全集。今回、シェークスピア没後400周年を記念して、完全新版として上梓。20年間、計6万部のロングセラー。


  ≫ 「薔薇王の葬列」読者のための、魂をこめたシェイクスピア紹介-1

 ≫ 菅野文「薔薇王の葬列」の感想


*ここからネタバレを含みます。




 
(ちくま文庫) W. シェイクスピア (著), 松岡 和子 (翻訳)
ヘンリー四世の治世は貴族の叛乱と鎮圧に明け暮れた。そのかたわらで放蕩息子の王子ハルは、大酒飲みのほら吹き騎士フォルスタッフとつるんで遊び歩くが、父の忠告に一念発起し、宿敵ホットスパーを執念で討ちとる。父の死後、ハルはヘンリー五世として期待を背負って国王の座につく―。ハルとフォルスタッフの軽快な掛け合いが見どころの人気英国史劇。


ハル王子を物語の主人公として語るのためには、ボリングブルックの背景を知る必要があった。
何しろ、王位簒奪者のボリングブルックの息子なのだから。

この作品では、シェイクスピアと言えば必ずといっていいほど名前の上がる、有名なフォルスタッフが登場する。
とんでも面白おじさんなのだが、ここであまりにもキャラ立ちして、主人公を食いかねないほどの活躍を見せたため、別の作品では主人公になっている。

ハル王子は、イギリスでは今も人気らしいと聞く。ヘンリー五世のことだ。
(フランスでは、王妃マルゴのだんな、アンリ四世が人気のはず)

暴れん坊将軍や、遠山の金さんでもあることだが、正体を隠して市政に出て遊び歩き、アホのふりをしている。
親しみやすい面白いキャラクター。

バカのふりして相手をだまし、最後にどんでん返しでキリッとしてかっこよいですーというわかりやすく面白い話

遠山の金さんや、暴れん坊将軍は、ただ一般人の恰好をして歩いているだけで、特に将軍は、上品で浮世離れしている所と、一般人とかみあわない会話をするところがおかしみを誘うのだが、ハル王子は悪党どもと馴染みまくって、けっこう無茶苦茶にヤンチャをやらかしている。

ハル王子がフォルスタッフとやりたい放題遊びまわっている裏で、王宮では年を取ったボリングブルックが今さら王位簒奪の罪に苦しんでいる。
ホットスパーが盛り上げてくれる、イチオシキャラだ。
本来ならば、彼が第二のボリングブルックになるかもしれない…?と思わせる脚本の妙。

とにかく、シェイクスピアは脇役に至るまですべて個性的で魅力的、かつ名言がいっぱいだ。

私は例えばドフトエフスキー、もしくは失われた時を求めてなんかは、読まないと人生損する!とか、そこまで言い切れないのだが、シェイクスピアだけは損するというか、人生100ばい面白くなると大手をふってはっきりと言い切れる。

ここでは、ウォリックやグロスター、クラレンスといった華々しい公爵、伯爵家の名前が列を為していて、それらの領地と爵位は戦争によって二転三転する。

公爵家が誰の手からどこへ行っているかの流れを追うのも、複雑だがたのしい。

 
トレヴァー・ロイル (著), 陶山 昇平 (翻訳)
シェイクスピア史劇を軸にした、わかりやすく本格的な初の通史!英国初の内戦(1455-1485/87)であり、シェイクスピア史劇の題材としても知られる薔薇戦争を、史劇を足掛かりに、ワット・タイラーの乱、百年戦争、ジャンヌ・ダルクなど戦争期間以外の背景も丁寧にたどり、新説を取り入れながら詳細に記述した英国・欧州中世史・軍事史研究の基本図書。






 
(ちくま文庫) W. シェイクスピア (著), 松岡 和子 (翻訳)
百年戦争のアジンコートの戦い(1415年)前後に焦点を当て、イングランド王ヘンリー五世の生涯を描いた史劇。『リチャード二世』、『ヘンリー四世第一部・第二部』に続く四部作の最終作。ヘンリー五世は前作『ヘンリー四世』で、手に負えない少年・ハル王子として登場していた。その若き王子も『ヘンリー五世』では高貴で勇壮な王に成長し、フランスの征服に乗り出す。


さて、ボリングブルック死去のあとに、無事に立派なヘンリー五世として即位したハル王子。

なんてことはない閑話休題です的な退屈な一話なのだが、そつのないハル(ヘンリー五世)のとてもイギリス的にはかっこよい百年戦争のエピソード、少人数で大人数のフランス軍を破ったアジャンクールの戦いの話だ。
イギリス人としては、超盛り上がるところだろう。
(フランス側からしてみれば、侵略者以外の何者でもないが)

この間、ずっと百年戦争でイギリス側はずっと優勢だった。
そう、ジャンヌ・ダルクが出るまでは。

まあ、イギリスの負け要因は間違いなくこの薔薇戦争の内戦による国内疲弊で、ジャンヌ一人が頑張ったからといってどうしようもなかったはずではあるが…。

この話のメインはかっこよくなったハルの、かっこいい勝利と、可愛い求婚。

真面目な政治と戦争の話に、冗談としゃれと名言満載のパンピーの会話をはさんで笑わせ、決して飽きさせないシェイクスピアマジック。

フランスに戦争で勝ったあとに、フランスの姫を王妃にして、めでたしめでたしという話。

この可愛いフランス王女が、ヘンリー六世のママで、薔薇王の葬列ではえらいことにされている。
(話としては仕方ないので別にそれは良い)

だけど、ここの求婚シーンはとても可愛くて好きだったんだけどなあ。
あどけない王女が、侍女を相手にコミカルに英語を練習する。
まだハルの顔も見ていないのに。

ハル(ヘンリー五世)は、まだうまく英語があやつれないフランス王女を相手に、これもコミカルな対話を重ねたあげくに、男らしくしっかり求婚。
ほんとにハルの所は薔薇戦争シリーズの中でも一番安定してて、安心して笑いながら見ることができる。

何気に、途中でハルが進軍途中で行うフランスの都市への演説がすごい
何のシェイクスピア研究もシェイクスピア論も読んじゃいないので、どう評価されてるか知らんが、ドキッとする、刺さるものがある

ハルは言葉を尽くしてはっきり語る。
兵士が猛り狂ってしまえば、略奪、強姦、虐殺を法で抑止するのは鯨に浜へ来いと命じるようなもの。自分に防ぐ術はない。そうはさせないで欲しいと。
この戦争の現実を、物語の中で物語として読むことで経験として頭に入るのは、ニュースを読むのとは全然ちがう。





 
(ちくま文庫) W. シェイクスピア (著), 松岡 和子 (翻訳)
百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞―王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事かぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。


ヘンリー六世

ついに!
薔薇戦争のはじまりだー!

良王ハルの死と共に盛り返したフランス側、ジャンヌ・ダルクが英国に対して、長い長い内戦の呪いをかける。

ボリングブルックの罪は、ヘンリー五世(ハル王子)によっていっとき抑えられていても、あがなわれてはいなかった。

はじまりを彩るのは徹底的にイギリス的な見方からの魔女、ジャンヌ・ダルク。
イングランドからしてみれば、ジャンヌは魔女。ブレない。

英語読みだとジョーンとかジョアンとか?
もうこれは、ジャンヌ・ダルクと訳さない方がよい。

ラ・プーセルだから。

フランス読みの「ピュセル」の方がずっと可愛くて雰囲気が出てるのだけど、別物なので。

途中にはさまれる、サマセットとリチャード・プランタジネット(薔薇王パパ)の白薔薇、赤薔薇を摘んでの言い争いは必見!
ウォリックもちゃんといます。

ちなみに弱々しいながらも、ヘンリー六世はそれなりに頑張ってちゃんと戦いに向き合っている。
何せ周囲が強烈すぎてうるさすぎて、自己主張が強すぎて、とても抑えきれない感じがよく出てる。
既視感、これははじまりのリチャード二世がそうだったのではないか?

戦いの場においては、めっちゃ悪魔を呼び出している、本当に魔女なんですねの驚きのプーセルさん。
たぶんこのジャンヌ・ダルクは、異世界転生してきた現代人に、悪魔召喚プログラムを授与されたに違いない。

悪魔合体を駆使してイギリス軍をやっつけるプーセルさん相手に、頑張りました、勇将タルボット!

かたや、弱い王ヘンリー六世の奧さんマーガレット妃は、サフォーク公の運命の出会いをする。

すごくもりだくさんのこの一話目。

捕らえられたジャンヌに対して皆さん、目を覆うような侮辱っぷりなのだが、このジャンヌは全っ然、負けてない。
毒舌満開でいちいち、言い返すので、レベルが小学生のケンカみたい。。

つよい。つよすぎる。

歴史的には、マーガレット妃はフランスのロレーヌ公の娘なので、和平派のサフォークとつるんだ→主戦派のヨーク公と対立した、ということになっているようです。






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(プリンセス・コミックス) 菅野文(著)
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